2007年12月1日 (土)

Magazine482:国語審議会 

 安田敏郎、講談社、760円と税金。

 1934年につくられた国語審議会の発足前後から近年の国語語分科会に至る動向を、歴史派と現在派に区分し、その二つの議論と結託状況を論述し、一貫性もなく、天皇制を飲み込んだ状況にあることなどを、その審議会メンバーの関連著作などで跡づけながらその迷走ぶりを明らかにした本。

 このところ、新書の水準は○○雑誌並に下落してるが、この本はそんなことが全くなくてきわめて水準が高いと思う。

 国語というものへの理由なき断定を繰り返す歴史派。便利や技術に依存するだけの現実派。情緒化し、倫理化している昨今の答申の論理的飛躍が論証されていくあたりは読んでいて楽しい。おすすめの一冊。(2007.11.29)


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Magazine481:移民の子どもと学力 

 OECD編著、明石書店、3200円と税金。

 PISA調査を基礎データとして、移民の子どもとネイティブの子どもとの「学力」を比較したのが本書である。

 移民の定義も国によって異なり、どの地域からの移民かも国によって違う中で、これを比較するのは容易なことではない。そこで、本書は、各国における移民統合とその歴史の検討から始めて、PISAの調査結果を言語や男女別、出身国別、学習特性などを取り出して集計し分析している。また、移民の子どもの言語能力を獲得させるための国別の施策を一覧にしてある点も資料として使える。

 若干の情報を付け加えておけば、移民の数が多いと統合が難しいわけではないこと、移民の子どもの学習意欲は極めて高いこと、しかし、得点は低いこと、得点差には国による違いがあることなどが示されている。(2007.11.25)


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Magazine480:今こそ学校で憲法を語ろう 

 渡辺治・佐藤功・竹内常一編著、青木書店、1600円と税金。

 冒頭に渡辺治が国民投票法を解説しながらなぜ保守勢力が9条の改憲を焦るのかを語る。その話を聞いた若い教師と学生が感想を率直に。ついで、井沼が学級で起こった盗難事件を事例に平和的生存権にかかわる生活指導実践を、佐藤は憲法とは何だろうという授業を、首藤はワーキングプアの授業を、杉浦は条文の改憲案の吟味や国民投票の実践を、理科教師の西村は原発の授業などを、塩崎は教師自身が憲法を語る実践としてのブログの試みを、岩崎は地域運動としての教育を憲法の観点から述べる。

 この後の章の執筆者が通常の教育書と違う。ジャーナリストの西谷文和がイラクの実相を写真を多用しながらマスコミ報道の問題を指摘し、司法書士の小牧美江が能動的な法教育への転換となぜこれに取り組むのかを語る。最後に、竹内常一の、実践に関する厳しい批判が並ぶ。これくらい厳しく言って通ってしまうところが良い。時間がとれたら、ブログにもう少し内容に踏み込んだコメントを書きたいと思う。(2007.11.19)


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Magazine479:ホームレス中学生 

 田村裕、ワニブックス、1300円と税金。

 今ベストセラーの本なので紹介は不要だと思う。問題はこれをどう読むかということだ。過酷な世間を生き抜けと読む人は危険だ。また、人情本として読む人も危険と隣り合わせだ。

 「解散」と家を追い出されてしまうこと自体問題なのだが、こんな事態の時にどうすることが人の権利としてあるのか、それをどう行使したらいいのかを教えていくこと、この点で現状の教育はきわめて不十分なことをこの本は示している。この本の記述には、いくつもの不法行為が田村少年に襲いかかったことを示している。いくつあるかを是非探してほしいと思った。

 (2007.11.18)


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Magazine478:「改定教育基本法」下の学校をどう 

 4・7集会実行委員会編、「改定教育基本法」下の学校をどう生きぬくか、太郎次郎社エディタス、1000円と税金。

 本書の言う「改定教育基本法」のもとで何が起こり、その意味を問い、これに対していかにしたたかに生きていくのがが本書の主題。

 鈴木和夫は、国家の側が標準を定めて、これを学校と教師、子どもと親に迫ってきている状況があるとつかみ、これに対して、例えば「私」のある学びを打ち出すことだという。深澤裕は、新任教師が自殺に追い込まれた原因を教師を孤立させる仕組みにあると指摘する。佐藤学は、教師が貶められている中で、信頼の回復を粛々と進めることを語る。

 その後に、福田惠一の京王線のレールの幅を素材とした授業、金子奨のキャッチボールする授業という提案、千葉保の授業素材に関する報告が並ぶ。それらの報告の後に討論の記録が並ぶ。それぞれ読みやすいし、ちょっと元気をもらえる本となっている。

 私の最大の注目は、金子さんのキャッチボールする授業。ドッチボールのように子どもを狙って当てる授業をに対して命名している。行っている様子の部分だけじゃなくて、つくっていくプロセスを解明したいものだと強く思う。(2007.11.15)


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Magazine477:世界12月号

 岩波書店、743円と税金。

 日本を立て直すが特集で、自民党と民主党あるいはそのブレーンが執筆している。しかし、今号で読むべきは、堀尾輝久論文だ。西原博史による堀尾批判への反論だ。たしかに、粗雑に述べた部分については堀尾論文は説得的だ。だが、「国民」問題が西原論文にはあるのだが、この点については明確にしていない。ともかく、関係者必読だ。(2007.11.13)


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Magazine476:歴史教育と歴史研究をつなぐ 

 山田朗編、岩波書店、480円と税金。

 編者と歴史学者と高校教師などとの座談会をブックレットにしたもの。前半は、戦争体験の継承が時間の流れとともに困難になっているという話、それと係わって生徒の歴史意識や歴史教育との距離がかつてと変わってきているという話が占める。真ん中は、タイトルは「歴史を学ぶことの意義」となっているが、内容は歴史教育における教材の問題=実物教材あるいはそれに係わっていくことの意味が語られている。後半は、教育と研究をつなぐとして、研究の叙述がなっていないという反省、あるいは生徒に教育が届くにはどうしたらいいのかが課題化されて終わっている。

 本書は、ずっと昔の歴史教育と歴史学の間のような問題、その後80年代の議論という二度にわたる議論を知るものからすると、何が発展しているのかと考えてしまう。同じ事柄も語られている気もするが、いくらか前に進んだかと思われることは、私の言葉で言えば、学びは構成主義的に考えなければどうにもならないということが滲んでいる点だろう。歴史観の押しつけへの拒否感、一教材一知識というような一対一対応のような授業の破綻についての発言がそれらをよく示している。ただ、そういう見地に座談会参加者が自覚的かどうかはわからない。

 渡辺氏の実践にまつわる話が具体的で一番興味深い。なおよくを言えば、それぞれが想定している歴史教育とは誰のどの実践を指すのか明示してくれると、つなぐ研究や教育がはっきりしていっそうよかったかと思う。(2007.11.12)


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Magazine475:子どもたちに表現のよろこびと・・ 

 子どもたちに表現のよろこびと生きる希望を、土佐いく子、日本機関誌出版センター、1619円と税金。タイトルが長くて冒頭に入りきらなかった。

 35年にわたる教師生活の集大成的生活綴り方の実践記録だ。子どもの言葉のおくにある生活を読み取り、そこにある子どもの希望・願いを聞きとり、それに意味を見いだし、それに応える教師として向き合うことに教育があることを示している。

 どんなに荒れているように見えても、具体的対応に立ちすくんでしまうことを正直に示しながらも、必ず、共感せずにおれない子どもの暮らしやまっとうさがあることが読み進める中で浮かび上がってくる。途中からは、事例を豊富に示しながら、そうした表現を生み出す最初の取り組み、書くことへとつなぐ具体的なとっかかりなどを示そうとしている。これは、作文を書く技術の解説ではなくて、子どもが書きたくなる活動、聞くこと、受け止めること、共感することそうしたやりとりの基本が丹念に示されていく。綴り方教師は、その手法をなかなか語らない中で、貴重な記録となっている。

 まもなく、実際のクラスを見学する予定となっている。期待したいと思う。子どもの姿に打ちのめされそうになっている人にこそ読んでほしい一冊。(2007,11,06)


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Magazine474:自立と管理 自立と連帯

 唯物論研究年誌第12号、青木書店、3500円と税金。

 平塚眞樹の論文を読むことが第一の目的。キーコンピテンシーの社会規定性を論じている。これは、要するに、三つのキーコンピテンシーとして語られている中身が、新自由主義的な動向と重なっているが、日本の教育動向や社会現実との位置関係について簡潔に論じたもの。

 今回の特集テーマは、自己責任論と向かい合う形で特集が組まれている。特に、飯島論文なんかは私の問題関心からすると興味深い内容を持っている。情報社会における感情マネジメントの問題を論じていて、これまでの議論を発展させたいという趣旨が伝わってくる。

 上田薫の再評価の論文があって、科学主義批判や生活主義批判の内容を深めていると思う。なのに上田を高く評価しすぎだと思ってしまうのは、上田の想定する実践についての分析検討がないことによる。また、環境教育の体験主義的活動が何故に有意義であるのかは、この論文では実証されていない。次の展開を期待したいと思った。(2007.11.03)


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