問題別4分科会 

「学力問題」を考える 

 学校や子ども・親の意識を強く規定している学力問題の現在を確かめ、これにどのように対応していくのか。その方向を交流・提案しあいたい。

一、学力問題への文科省の政策

 二一世紀に入って新学習指導要領が実施され、すぐに学力低下論がマスメディアをにぎわした。その圧力のもとで文科省は、以下のような政策を打ち出した。時期を確認していくと見えてくることがある。

・〇一年少人数指導用教員加配開始。小中学校の学力テスト開始。

・〇二年「学びのすすめ」発表。新学習指導要領完全実施。学力向上フロンティア事業開始。スパーサイエンスハイスクールなど設置。指導力不足教員に対するシステム作り開始。IT授業の本格導入。

・〇三年中央教育審議会答申(一〇月習熟度別指導・補充発展学習の推進を謳い、総合学習の計画化・目標の明確化)学習指導要領一部改訂。

 学力低下論が広がる中で、文科省の政策は、基本的には習熟度別学習やエリートコースの設置へと向かったことがわかる。また、この裏側では、「心のノート」読書活動の推進、体験的活動の推進が進められた。こうした政策を見ると、単に基礎学力徹底論へと方向転換したのではないことがわかる。むしろ、本来の多元的能力主義である「ゆとり教育」を具体化していることがわかる。

二、教師評価と学力テスト

 文科省の「学びのすすめ」以降、地方教育委員会、学校管理職、相当数の教師が、「基礎的・基本的内容の徹底」に舵をきった。こうして、ドリル的学習が広がり、「総合的な学習の時間」の削減や知識記憶型授業への転換がすすめられた。中学校では選択科目の学習もそうした性格を強めている。また、少人数指導が、「習熟度別」学習に一元化される傾向を強めることとなった。

 他方で、文科省による学力テストだけでなく、各県・各地域教育委員会単位・各学校単位の学力テストが数多く実施されるようになった。テストの増大は、学校間競争、教師間競争を引き起こし、一部のテストでは特定の子どもを排除して平均点を高くしようとするなど、テストに支配された学習と業務が広がっている。それは、子どもの学びのためではなく、地方行政の実績づくりや、教師評価のデータとして利用され始めていることと無関係ではない。

三、子どもの学びの状況

 学力テストの種類や性格によってその国際的な順位や動向には違いがあるが、子どもたちの学習意欲の低下という点では、多くの調査において同一の傾向を示している。また、社会的下位層の子どもたちに特に顕著と指摘されるようにもなっている。これに対して、今すすめられようとしているドリル的学習や習熟度別学習では、その成果を上げたというデータが今のところ存在していない。国立教育政策研究所の調査が示すように、習熟度別という事実上の能力別学習が知識の記憶を中心とした「学力」においても有効という証明をできずにいる。しかし、学校現場では、そうした学習が広く推進され、子どももそうした学習に拘束される傾向が顕著となっている。

四、どんな授業と学校を目指すのか

 ドリル的学習は、機械的記憶に一時的効果を上げるが、わかることを保障しない。じっくり考えることも保障しない。さらに、学ぶことの意味を内容に即して示すこともできない。従って、一番問題となっている学ぶ意欲を育てることにも繋がらない。まして、子どもの知りたがっていることに応える学びをつくり出すこともない。

 だから、私たちは、鍛錬主義的な学習に対しては、わかることを優先する必要がある。そのために、考えあうプロセスを重視した学びをつくり出すことが必要である。さらに、子どもの知りたがっていることを中心に置きながら、そこから視野を広げ深めていく活動を目指す必要があるのではないか。

(2005.6.3)