1 物語る力
教師の「演出力」というのは、演技力・表現力、教室に持ち込む小道具のセン
スなどではない。そうではなくて、私は、子どもたちを組織し、日々の出来事を
子どもたちの物語に構成する力なのだと考える。
日々起こる学級のトラブルをただ実務的に解決していくことではなく、個々の
子どもにとっての意味や学級にとっての意味を陰影のあるものにすることが必要
なのだ。
そのために必要な二つのことを指摘しておきたい。その一つは子どもの声を聞く
こと、もう一つがつながることである。
2 声を聞く
子どもの声を聞くことならやっていると言うかもしれない。確かに、トラブル
の発生状況・原因を多くの教師は聞いている。しかし、その時、教師の見方から
トラブルを裁断するために聞いていないだろうか。
それとは違って、当該の子どもの側からはどのように見えているのかを掴むよ
うに「聞く」ことを主張したい。また、同じ事柄が他の子どもにはどのように見
えているのかを「聞く」ことも欠かせない。こうすると子どもの声は一つでない
ことが見えてくる。子どもの声は音声としては一つだが、そこには複数の声が必
ずある。すると、別の言動があることが見えてくる。
教師に裁断される質問には、やがて応答しなくなる。逆に、見方を読み広げる
ことになる「聞く」には子ども自身にも発見がある。トラブルを解決する糸口を
子どもと共に発見できるかも知れない。
そこで、日記であれ、帰りの会であれ、子どもが訴えることのできる時間や場
所をつくると共に、教師の第一声を「どうしたの?どうしたかったの?どういう
意味?」などの言葉で始め、教師の理解したことで良いのか子どもに確認するよ
うに対話することーこれを今一番推奨したいのである。
3 外の世界とつながる
子どもや学級のトラブルとは、要するに人とのつながり方の失敗である。だか
ら、その多様なつながり方を教えていくことが教師の重要な仕事である。
このつながり方において重要なことは、外の世界とのつながりを学級にもつ
くっていくことである。教師が一人であらゆることを背負うと必ずうまくいかな
い。保護者だけでなく、地域や世界の人々とのつながりを条件に応じてつくって
いくのである。
アフリカへの食糧支援をしている地域の人を教室に呼んで話しを聞いたクラス
では、「あなた達の方がかわいそう」という一言にショックを受け、自分たちの
暮らし方や人とのつながり方を調べる中で捉え返していった小学校実践がある。
教師だけ、当事者だけで解決するのではなく、多様なつながりを付けると、子ど
もたちは、自分たちも世の中も複数的に豊かにとらえることができるようにな
る。そんな機会をつくりたいものである。
(2006.02)